2013年5月17日金曜日

『縮刷版 曼荼羅図典』



縮刷版 曼荼羅図典』の装丁です。
図版=染川英輔 解説=小峰弥彦/小山典勇/高橋尚夫/廣澤隆之


カバー=アラベール(スノーホワイト) マットPP加工
帯  =ヴァンヌーボ スムース-FS(スノーホワイト)
表紙 =スノーフィールド
見返し=スノーフィールド
別丁扉=OKフェザーワルツ(雪)


●今日は明朝体の話。

帯の〈待望の縮刷・普及版〉のゴシックを除いて
全て「筑紫オールド明朝」です。
帯のヘッド・コピーは「筑紫Bオールド明朝」(その他は「A」)。


曼荼羅関連の書籍といえば、杉浦康平さんの仕事を
思い浮かべる人も多いだろう。
写植の時代なら写研の秀英明朝だろうか。

それにしても、何か新しいニュアンスにしたいな。
どんな書体を使ったところで杉浦さんの仕事に
太刀打ちできないと分かってはいるけれど。
そこで「筑紫オールド明朝」を選ぶことにしました。
おかげで、歴史を感じさせる格調高さをそなえつつ、
現代的なスッキリ感も出たのではないでしょうか?


──話は変わって、今年の2月。
その「筑紫オールド明朝」の書体デザイナー・藤田重信さんと、
フォントワークスのMさんに、お食事会に招待されました。
マルプデザインの清水さん夫妻を誘って、
Mさんに指定された歌舞伎座の裏手のお店の地下に行ってみると、
こんな大きなスペースが銀座にあるのかと思うような
スゴイところでした。料理も美味で秘密にしておきたいような場所です。

楽しい夜のあと藤田さんがつぶやいてくれました。
 ↓


清水さんはフォントワークスの書体を使った
最近の仕事を、藤田さんとMさんに見てもらいました。
 ↓


その後、藤田さんたちとメールのやりとりがあって
藤田さんから書体について質問がありました。

清水さんは熱心に返事を書いていたのですが
ぼくは忙しさにかまけて返事できずじまいでした


3カ月も前のことだし、今さらで、ちょっと質問の答えとも
ずれるのだけれど、自分が本文書体を選ぶときの
ことなど少し書いてみることにします。

──本文フォーマットを作る仕事はかなりの頻度で
装丁とセットでやってくる。

まずゲラ(テキスト)に目を通して、イメージしてみる。
そのときに自分がイメージするのは書き手(著者)のだ。

著者の意図として、そのテキストは読者にどう思われたいのか。
そのは、高いのか低いのか。
強いのかやさしく語りかけてくるのか……
著者のを書体にのせたときになるべく違和感が
無いように、フォントを選定する。

今では自分の中でスタンダードになってきているけれど、
女性のをのせるイメージのときに、藤田さんのつくった
「筑紫明朝」を本文に使うことが比較的多かった。
ご本人にお会いすると女性的とは思わないのだけれど
藤田さんが写研出身というのもどこかしら関係するのでしょうか?


ところで、オールド系明朝のフォントは、随分と豊富になって、
デザイナーにとっては、ありがたいのは確かだが、
[築地五号(「つくし」じゃなくて「つきじ」ね)]の復刻の
ようなものばかりだなぁ、と。
祖父江慎さんもどこかで憂えていました。

冒頭の筑紫オールド明朝ABは金属活字の影響を
感じさせながらも新しさがある。


藤田さんのような志をもった書体デザイナーが
あと何人かいれば、明朝体は次のステージに進めるのでなないかと
思うのだけれど、どうだろうか。


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