図版=染川英輔 解説=小峰弥彦/小山典勇/高橋尚夫/廣澤隆之
カバー=アラベール(スノーホワイト) マットPP加工
帯 =ヴァンヌーボ スムース-FS(スノーホワイト)
表紙 =スノーフィールド
見返し=スノーフィールド
別丁扉=OKフェザーワルツ(雪)
●今日は明朝体の話。
帯の〈待望の縮刷・普及版〉のゴシックを除いて
全て「筑紫オールド明朝」です。
帯のヘッド・コピーは「筑紫Bオールド明朝」(その他は「A」)。
曼荼羅関連の書籍といえば、杉浦康平さんの仕事を
思い浮かべる人も多いだろう。
写植の時代なら写研の秀英明朝だろうか。
それにしても、何か新しいニュアンスにしたいな。
どんな書体を使ったところで杉浦さんの仕事に
太刀打ちできないと分かってはいるけれど。
そこで「筑紫オールド明朝」を選ぶことにしました。
おかげで、歴史を感じさせる格調高さをそなえつつ、
現代的なスッキリ感も出たのではないでしょうか?
──話は変わって、今年の2月。
その「筑紫オールド明朝」の書体デザイナー・藤田重信さんと、
フォントワークスのMさんに、お食事会に招待されました。
マルプデザインの清水さん夫妻を誘って、
Mさんに指定された歌舞伎座の裏手のお店の地下に行ってみると、
こんな大きなスペースが銀座にあるのかと思うような
スゴイところでした。料理も美味で秘密にしておきたいような場所です。
楽しい夜のあと藤田さんがつぶやいてくれました。
↓
清水さんはフォントワークスの書体を使った
最近の仕事を、藤田さんとMさんに見てもらいました。
↓
その後、藤田さんたちとメールのやりとりがあって
藤田さんから書体について質問がありました。
清水さんは熱心に返事を書いていたのですが
ぼくは忙しさにかまけて返事できずじまいでした…。
3カ月も前のことだし、今さらで、ちょっと質問の答えとも
ずれるのだけれど、自分が本文書体を選ぶときの
ことなど少し書いてみることにします。
──本文フォーマットを作る仕事はかなりの頻度で
装丁とセットでやってくる。
まずゲラ(テキスト)に目を通して、イメージしてみる。
そのときに自分がイメージするのは書き手(著者)の“声”だ。
著者の意図として、そのテキストは読者にどう思われたいのか。
その“声”は、高いのか低いのか。
強いのかやさしく語りかけてくるのか……。
著者の“声”を書体にのせたときになるべく違和感が
無いように、フォントを選定する。
今では自分の中でスタンダードになってきているけれど、
女性の“声”をのせるイメージのときに、藤田さんのつくった
「筑紫明朝」を本文に使うことが比較的多かった。
ご本人にお会いすると女性的とは思わないのだけれど…。
藤田さんが写研出身というのもどこかしら関係するのでしょうか?
ところで、オールド系明朝のフォントは、随分と豊富になって、
デザイナーにとっては、ありがたいのは確かだが、
[築地五号(「つくし」じゃなくて「つきじ」ね)]の復刻の
ようなものばかりだなぁ、と。
祖父江慎さんもどこかで憂えていました。
祖父江慎さんもどこかで憂えていました。
冒頭の筑紫オールド明朝A、Bは金属活字の影響を
感じさせながらも新しさがある。
藤田さんのような志をもった書体デザイナーが
あと何人かいれば、明朝体は次のステージに進めるのでなないかと
思うのだけれど、どうだろうか。
(F)