「ざっくばらんにいきましょう。」
フォントワークの筑紫書体の開発者であり、
「筑紫オールド明朝」「筑紫丸ゴシック」で
東京TDC賞も授賞された、
藤田重信さんの第一声で始まりました。
場所は、FUKUDA DESIGN。
普段は福岡で仕事されている藤田重信さんが、
仕事で上京した折り、わざわざお話に来てくださいました。
福田ひとりだけでは、なんだか申し訳ない気持ちもあり
フォントワークス・ユーザーの
“筑紫LOVE”なデザイナー数人に急遽声をかけ、
ミニ・セミナーのような形になりました。
金属活字に敬意をはらいながら
新しいエッセンスを注入するのが藤田流でしょうか。
若いころお金をつぎ込んだ趣味の洋服を見る目までもが、
文字のラインに繋がっていたりする話や、
「筑紫オールド明朝」などの、かなの一文字ひと文字の
カーブについての解説をしていただきました。
むしろ学生や書体の専門家を集めて大きな会場でするような
お話を、ひざをつき合わせるようなこんな小さな事務所で
していただけるなんて……。
本当に充実の贅沢な時間。
藤田さん、どうもありがとうございました。
写研に勤めていたころは優等生では無かったと
おっしゃる藤田さん。
フォントワークスに移って、
どんな書体をつくりたいか聞かれたときに、
「MM-A-OKL(石井中明朝オールド)や、
ILM(イワタ明朝オールド)に匹敵する明朝が
フォントワークスに必要」と答えたそうです。
対して「何年かかってもいいです」とGOを出した社長の
言葉に感激して、5年がかりで完成したのが「筑紫明朝L」です。
2001年、まだ発売前の「筑紫明朝」を
「d/SIGN」誌 no.1などで見かけていました……。
これは、戸田ツトムさんがベータ版を使って
いたものだったんですね。
今では筑紫書体のファミリー展開はずいぶん充実してきました。
「筑紫明朝」「筑紫ゴシック」「筑紫A丸ゴシック」
「筑紫B丸ゴシック」「筑紫オールド明朝」
「筑紫A見出しミン」「筑紫B見出しミン」。
ぼくがフォントワークスの「LETS」ライセンス契約を
したのは2005年のことです。
最近よく使っているのは、「筑紫A、B丸ゴシック」。
L〜Eのバリエーションは重宝しています。
また藤田さんは、祖父江慎さんにもらった
古い活字の印刷物に刺激され、作りはじめた
明朝のかな書体も魅力的で完成が楽しみです。
別の日には、フォントワークスの前田さんに
今後リリース予定の「筑紫オールドゴシック」、
「筑紫苑明朝」他のサンプルを見せてもらいました。
とても素敵な書体で、すぐにでも使いたいと思いました。
前田さん、どうもありがとうございました。
このあたりは、次号「デザインのひきだし」
でも見ることができそうです
ところで一番上の画像、「筑紫オールド明朝」を使った
サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のキャンペーン広告から。
(数字は筑紫オールド明朝従属の書体ではありません。
和文も微調整しているようです)
最近はこのようなメジャーな広告でも、
筑紫書体をよく見かけるようになりましたね。
「…やっとですよ。」
と、藤田さんは感慨深そうにうなずいていました。
藤田重信さんのお話はこちらでも読むことができます。
『文字のデザイン・書体のフシギ』
(F)