『女怪幻譚「骷髏(クウロウ)」』。
先日の「装丁夜話」で紹介した本の一冊です。
『家畜人ヤプー』の幻の作家・沼正三(天野哲夫)先生の
書き下ろし倒錯小説です。
まだ仕事がそんなに装丁メインでもなかったころ、
ちょっと古い本(95年 二見書房)ですが
「装丁夜話」という名前の会には
ふさわしいようにも思いまして。
こんな機会でもないとなかなか紹介できないでしょう……。
長くなりますが、順に説明しましょう。
↑エロティックな装画は、林良文氏の「肉の増殖」。
たしか、トレヴィル(懐かし!)の画集から
お借りしたように記憶しています。
書体は写研の紅蘭中楷書。(写真ではちょっと太っています)
これ、楷書体の中では一番好きでした。
デジタルのフォントで出ないですかね。
しっかりとした函にラフグロス系の用紙を貼っています。
装画を引き立てるため、装画と白枠の部分にはマット・ニスを、
それ以外にはグロス・ニスを引きました。
↑函から本体を取り出すと、カバーの表1・4のセンターには
表紙のドクロが覗くように穴を空けています。
カバーはコート紙にグロスPP加工。
↑カバーをはずすと、表紙は革調の樹脂加工紙、Sベランカラー ラミー(黒)。
ドクロの輪郭を黒(グレーだったかな?)で刷って、ドクロと背文字は
ホログラム箔(写真がうまく撮れていませんね)。
表四にはネガに反転したドクロが、やはりホログラム箔で。
表四にはネガに反転したドクロが、やはりホログラム箔で。
↑別丁扉はシャイナー(白)。見返しは江戸小染 うろこ。
↑本文書体は、写研のILM-A(岩田細明朝体)。
2色刷りで、バックには林良文氏の絵が章ごとに変わります。
こんな贅沢は、なかなか出来そうもないですね。
そういえば、当時『ダ・ヴィンチ』の「今月の装丁大賞」の
コーナーで「ダ・ヴィンチ賞」をいただいたのを思い出しました。
『ダ・ヴィンチ』(96年/4月号)を引っぱり出してみると、
こんなコメントが──
全体の作りが60年代的な暗さ。
ここまでくればエンターテインメント。
だそうです。長々と失礼しました〜
(F)